武政 誠一 先生
【専門分野:理学療法学】
今回、本学リハビリテーション学部の開設当初から教授を務めている武政誠一学部長にインタビューを行いました。先生の学生時代を振り返り、そして研究に対する想いを語っていただきました。
Q、先生はどんな学生時代を過ごしていましたか?
中学生の時は、実は社会科教員を目指して高校に進学しましたが、徐々に社会福祉に興味を持つようになりました。最初は社会福祉士にも興味がありましたが、リハビリテ-ション学院へ社会人入学した方から話を聞いたりするうちに、リハビリテ-ションに興味を持ちました。不器用で大雑把な私にとっては、作業療法士(OT)よりも理学療法士(PT)が自分には合うと感じ理学療法士を志すようになりました。
当時は、教科書も今のようにそんなに整っていない時代。理学療法士という資格(理学療法士及び作業療法士法)自体もできて10年くらいでしたので、足りないものは英語の文献をみんなで翻訳していました。
それでも大変と思われるでしょうが、はじめて理学療法士の養成校ができた頃は、外国の先生から直接学んでいたくらいなので、まだ恵まれていると思います。
Q.すごく勉強されていたのですね。学生の頃は、勉強以外にどんなことをされていたのですか
理学療法の勉強をしているころ、友人に誘われて社交ダンスサークルに入っていました。今は、何も踊れないですが。
今続いている趣味といえば、サッカーですね。中学の頃はフォワードのポジションを守り、社会人の時は、病院のサッカ-チ-ムに所属したこともありました。また、観戦することも大好きで、Jリーグのヴィッセル神戸を応援しています、スタジアムへ試合を見に行くこともありますが、行けないことが多くなり、今はDAZN(スポーツ観戦アプリ)で試合観戦をしています。
Q、先生の研究分野はQOL(クオリティ・オブ・ライフ *1)ということですが、なぜ興味を持たれたのですか
もともとは、筋肉やバイオフィードバック療法に興味を持っていました。しかし、ある時、卒業生の就職先の地域の調査の手伝いで、在宅障害者様の障害構造や生活状況等の実態調査をしたことがありました。
その時に現場で感じたのは、患者さんが「退院された後、どのように暮らすか」が、とても大事だと改めて感じました。私たち理学療法士は、患者様が退院後普通に満足した生活が送れるようになるためにはどのようにサポートすべきかを考えることが大事だと思いこの分野の研究に取り組み始めました。
今の関心は、障害を持たれた方が、高いQOLを維持した状態で、住み慣れた地域・自宅で、安全で安心できる生活を送れるように保証するために、我々理学療法士がどのように対処すべきかを追求していきたいですね。
Q、先生の分野を研究するならどのようなことを学んでおけばいいでしょうか
今のトレンドは、介護保険や地域包括ケアですね。このような世の中の動きを知っておくことで、実際に患者さんの退院後どのように過ごすかのイメージもわかりますよね。学生のみなさんには、単に障害をみるだけではなく、生活者としての障害(阻害)を見てほしいと思いますね。
Q.先生は授業をするときに感じることなどありますか。
今は1~4年生のゼミを担当しています。特に、一年生はどのようにすればより充実した学生生活が送れるのか、個別に面談を実施しています。3年生以降は国家試験対策をおこなっています。
今の学生は、・・・とよく聞きますが、私の学生時代よりはやんちゃな学生さんもいますが、まじめでおとなしい学生さんが多いように思います。本学の多くの学生さんは自分の学習方法で頑張っていますが、中にはまだ自分の学習方法を身につけていない学生さんもいて、自分の学習方法を身につければ必ず伸びる可能性を沢山持っていると感じています。
Q、卒業生とも交流があるということですが
そうですね、年1回の卒後研修だけでなく、実習のシミュレーションや実技試験の指導に来てくれた時に研究室にも顔を出しに来てくれます。また、仕事の休みに研究室を訪れ近況を報告したり、結婚の報告など来てくれる卒業生もおりうれしく思っています。
やはり、今現場にいる卒業生と話をすることも刺激的ですし、現場で最先端のリハビリテーションの現場を見てきている子たちが後輩の指導をしてくれるととても有意義だと感じます。
卒業生のみなさんには、卒業しても、大学との関係は終わりではありません。本学は海辺にあり、皆さんにとっていつでも帰ってくることのできる「ははなる みなと 母港」のような存在となり、教職員と皆様の力で、後に続く後輩の学生たちを支えていけることを願っています。 またなによりも対象者様のことを第一に考え、対象者様のQOLを向上させるとともに、自分のQOLを高めていって欲しいです。
Q.最後に、先生が思う神戸国際大学の魅力、そして学生に向けてメッセージをお願いします。
本学はマンモス大学ではなく小規模大学だからこそ、私は以下の2つの魅力を感じています。一つは教職員が協力してきめ細かな学生支援が実践できること。もう一つは教職員が協力し合って、より良い大学を目指した活動が実践しやすいことと思っています。
学生の皆さんには、自分の大切な人の担当になってもらいたいような理学療法士を目指し、科学的な専門的知識(science)、確かな技術(technology)を持ち、患者様に応用する行為(practice)、そして常に相手の立場に立って優しい心で望むあるいは向かい合うことのできる豊かな人間性、医術(art)仁術(humanity)を兼ね備えた理学療法士に育ってくださるように願っています。
*1)QOL(クオリティ・オブ・ライフ)
日本語では「生活の質」などと訳され、「生きがい」や「満足度」という意味。障害があってもその人らしい満足いく生活が営めるようにということで、QOLが注目されています。