NEWS
- お知らせ
日本料理は神様への感謝を忘れない日本独特の文化 相手を思いやる心からマナーが生まれた
現役ホテリエが教えるテーブルマナー講座
テーブルマナー1級の資格を持つ現役のホテリエをゲスト講師に招いて和洋食のテーブルマナーを学ぶ講座が6月11日、本学内で行われた。ホテルのレストランなどで食事をしたことがない学生がほとんど。日本食では食をいただけるありがたみを伝えるために古くから向かい側に神様がいると言われ、お膳の手前に箸を横にして置くことで、その箸が神様との境界線になると伝えられている。ある学生は「和食が神様と食事をしていると言われていることは知らなかった。これからは一つ一つの食材をしっかり味わっていきたい」と食への感謝を改めてかみしめていた。

現役ホテリエはホテル北野プラザ六甲荘(神戸市)エグゼクティブマネジャーの淀井武弘さん。日本ホテル・レストラン技能協会のテーブルマナーマスター認定講師(西洋料理・日本料理)でもある。経済学部の鍋嶋正幹准教授が教えるホテルオペレーションAの授業で学んでいる同学部の4年生13人が参加した。箸の持ち方は知っているが、テーブルマナーは見るのも聞くのも初めてのことばかりという学生たちは淀井さんの説明を真剣に聞き入っていた。
まずはテーブルに着く前の椅子の座り方。宴会などでは向かって右にいる人が目上とされているので、椅子に座るときは左側から回り込んで着席するのがふさわしい。慌てず礼儀正しく座ったとしても椅子の右側を回ると目上の人にお尻を向ける形になるから要注意だ。決して深々とは座らず、背もたれに背中をつけないでテーブルの端からおなかがこぶし一つ半ほど離れているのがベストの状態。常に背筋を伸ばしていることが礼儀正しい姿勢といえる。

ナフキンをナフキンをきれいにたたんで両ももの上に乗せ、淀井さんが持ち込んでくださったキッシュ(卵料理)を試食しながらフォークとのナイフの使い方を確認。ステーキなどの肉料理を切る場合は右手でナイフを持った場合(右利き)は肉の左側から切り、左利きなら右側から切って食べるのが良いとされている。日本では食事中にしゃべるのはよくないという教えもあるが、西洋料理では会話もおいしいメニューの一つ。ただ、口いっぱいに料理をほうばってしゃべるのはマナーに欠ける行為となる。肉料理にしてもパンにしても口に入れるのは一口ほどの大きさにとどめるのがベスト。淀井さんはテーブルマナーの根本を「食事は常に相手が目の前にいる。その相手に不快感を与えないようにして、コミュニケーションをとりながら食事をするのが望ましい」と説明した。

日本料理には他の国や地域にない特別な考えがあるという。淀井さんによると、日本料理では食をいただけるありがたさを表すために、目の前に神様がいて一緒に食べていると伝えられているという。お膳の手前に箸を横向きに置くのは日本だけ。その位置が神様と自身の境界線になると伝えられ、境界線の向こうにある料理は神様からいただく神聖なものばかり。感謝の気持ちを忘れずに食をとるという考えは日本独特の文化といえるだろう。
国際文化ビジネス・観光学科の山寺光太郎さん(21)=大阪市出身=は「神様を大事にする日本ならではの考え方があったのを初めて知りました。これからはその考えを頭に入れて食事したいと思います。お肉の切り方なども初めて知ったので参考になりました」とうなずく。同学科の徐宋源さん(25)=中国・山東省出身=も「椅子の座り方にもマナーがあるのを知りました。これからレストランで食事するときに役立ちます。日本文化などもっと勉強したい」と言葉に力を込めた。
講座の最後に淀井さんは「平和な時代に相手のことをおもんぱかることができたから食事のマナーが生まれた。余裕のある時代だったからいろんな文化を学ぶことができ、それが世界へと広がっていった。みなさんも相手があって自分があるということを忘れず、社会に出ていろいろな人と出会ってほしい」とまもなく社会人として旅立つ4年生にエールを送った 。