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空の上だけでなく目的地での利用者の安全も願う航空業界の実態を肌で体験

角谷プロゼミ生が神戸空港で

 神戸市の空の玄関口として利用されている神戸空港を取り巻く環境がいま、大きく変化している。昨年度の利用者数は361万人で過去最高値を更新。今年4月からは国際チャーター便の就航が始まり、悲願だった国際化が実現した。第2ターミナルも開業し、5年後までに国際定期便の就航開始を目指して整備が進められている。開催中の「EXPO2025 大阪・関西万博」の来場者による利用も今後増えそうだ。

 その進化する神戸空港で、本学学生たちが利用客を運んで到着したばかりの旅客機に実際に搭乗して機長や客室乗務員(キャビンアテンダント=CA、またはフライトアテンダント=FA)の声を直接聞くなど、これまでに知ることができなかった航空業務の実態をのぞく授業が6月4日に実施された。参加したのは経済学部の経済経営学科、国際文化ビジネス・観光学科で学ぶ2年生のプロゼミ生(角谷由美子准教授)19人。将来は運輸航空業界で働きたいと目を輝かせて参加した学生も多く、有意義な経験になった。

 

 旅客機に近づいて前から、後ろから、横からといろんなアングルで観察し、記念写真を撮った後はいよいよ機内での特別待遇に。機長、副操縦士、FAさんに迎えられて機内に入ると真っ先に向かったのはコックピット(操縦室)だ。二つの座席それぞれに操縦かんがあり、室内は機械の山。ボタンの数は数えきれないほどで最新鋭と思われる装置がこれでもかと並んでいる。同学科のウロロヴ・アジムジョンさん(24)は「操縦室をいつか自分の目で見たいと思っていました。まさか、きょう実現するとは思わなかった」と興奮気味だ。ウズベキスタン出身で「日本とウズベキスタンを結ぶ空の便でいつかは操縦かんを握って飛んでみたい。その仕事の責任をしっかり果たせるようにこれから勉強していきたい」と夢を大きく膨らませていた。

 客室に入ると、直前まで機内で仕事をしていた乗務員の方たちとの懇談の場となった。学生たちから「この仕事を目指して学生のうちにやっておいたほうがいいことはありますか」という質問に、副操縦士さんから「パイロットはバランス感覚が良い人がなりやすいと言われているので、遊びと勉強を両方とも一生懸命やってください。ただ、身体検査が毎年あるので体を健康に保ちながら大学生活をしてください」とアドバイスされた。また、FAさんの一人からは「学生のうちにしか自由な時間はないので、会えるうちに友達や親に会ってプライベートな時間を充実させてほしい。私の学生時代はコロナ禍でずっと家にいたのでもっと会える時間を作ればよかったなと思いました」と実体験をもとに有効な時間の利用を勧められた。

 同学科のマルップ・ヒダヤットさん(22)が「留学生がこういう仕事に就くために何をやっておけばいいですか」と質問。これに対し、機長さんが「この仕事はパイロットも客室乗務員もコミュニケーションがすごく大事です。ふだん人見知りの人も仕事でのコミュニケーションは大事なのです。日本は日本語が主なので、しっかりコミュニケーションがとれるように日本語を学んでほしい」と激励してくださいました。インドネシア出身のヒダヤットさんは「日本の空港で働きたいので日本語や英語をもっと勉強したい。5年ほど働いて経験を積んだら帰国してインドネシアの空港で働きたい。特にバリ島は外国人の観光客が多いからやりがいがあります」と将来を夢見て目を輝かせた。

 同学科の笹山幸我さん(20)も「機長さんやFAさんと実際に会話ができた。ホテルの職に就きたいが航空の仕事もいいなと思いました」。経済経営学科の上熊須鵬仁さん(20)も「数分前まで利用客を乗せて働いていた方たちなのに、気軽に生で話をしていただいた。本当に貴重な経験になりました」とそろって声を弾ませた。

 CAさんによると、この日は一日最多の4便に乗務。午前に名古屋空港からいわて花巻空港、午後は同空港から神戸空港に飛び、そして神戸空港と信州まつもと空港を往復する。そのハードスケジュールに一同はびっくり顔。新しくできた第2ターミナルを見学し、最後は信州まつもと空港へ出発するFDA機を見送るため再び駐機場へ。利用客の荷物を機内に収める裏方さんの仕事ぶりにも遭遇した。同学科の税本裕大さん(19)は「FAさんが厳しいスケジュールで仕事しているのに驚いたし、機長さんやみなさんが利用客の安全をもっとも大切にしているのを知りました。それと(裏方さんが)ベビーカーをビニールで包んで大事そうに積み込んでいました。空の上の安全だけでなく、目的地に着いてからの幼児の安全にまで気遣っている。細かな配慮がすごいなと思いました」と感心していた。

 緑色にペイントされたFDA機が空に飛び立つのを、手を振って見送った学生たち。どの顔も同空港に入った時とは一変し、目の色が変わっていた。FDA担当者に積極的に話しかけていた国際文化ビジネス・観光学科の川崎倭緒さん(19)は「空港系の仕事に就きたいのでメチャクチャ勉強になりました。大事だという英語力が不安ですが、その前にコミュニケーション力を高めることも大事だと言われました」と話し、何度もうなずいていた。

今回のプログラムは昨年に続いて2回目。角谷准教授は「実際に駐機場まで足を運んで体験できる。興味のない学生でも就職の一つの選択肢となり、エアラインも楽しいなと思ってもらえたらと企画しました」と説明。国際文化ビジネス・観光学科には国際コミュニケーション・エアラインコースもあり、はじめから航空業界への就職を志望して入学する学生もいる。「普段の授業中には見たことがないような顔つきでFDAの方に質問している姿を見て、実際に見聞きする体験が本当に大事だと思いました。身近に空港がある大学の地の利を生かしたプログラムの重要性を改めて感じました」と同准教授が満面に笑みを浮かべながら学生たちを見つめた。

今回のプログラムはFDA社と関西エアポート神戸のご協力で同空港内での安全を第一に行われた。同准教授は「ご協力いただき、本当にありがたいことでした。来年もご協力いただければ、ぜひ開催させていただきたい」と頭を下げていた。