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人と人のつながりを大切にしてスープの味を守る賀正軒
賀正軒などを運営する「NIM」社長の福田さん
経済学部の鍋嶋正幹准教授が教える「飲食産業論」の授業で、兵庫県内に6店舗を構える「神戸豚骨ラーメン賀正軒」を運営する株式会社NIM代表取締役の福田泰三さんをゲスト講師に招いた講義が12月22日に行われた。

賀正軒のルーツはフランチャイズのラーメン店。本部から運ばれてくる冷凍スープや食材を使ってラーメンを提供していたが、より安全で質の高いラーメンを作りたいという思いから、自店舗で一から手作りスープを手がける専門店へと転換。厳選した食材と豚骨と相性の良い灘の水を使い、3日間かけて作るまろやかでクリーミーな豚骨スープが特徴。お客様へ「安心・安全な料理を提供する」を理念に運営され、神戸で人気の高いラーメン店に成長している。

福田さん
福田さんは2006年の19歳の時にNIMの前身の会社にアルバイトで入社。携帯電話の販売代理店などで働きながら11年に役員に就任。光回線や化粧品、中古車の販売事業を手がけたが、いずれも長続きできずに失敗し、17年に賀正軒に異動した。同年に三宮店をオープンさせると順調に成長を続け、18年に武庫之荘店、コロナ禍にも地道な運営を続けて20年に六甲道店、24年に姫路店と元町店をオープンさせるまでに発展させた。
社員は中卒、高卒、大卒にアルバイトとさまざま。社風は「社員の意見をどんどん聞いて、どんどん実現していくこと」。社員が会社から言われたことをするだけで満足するのではなく、自分がどうしたいのか、どうしたら面白く、楽しく働けるかを考えることを重要視している。福田さんは「仕事は2、3年いれば覚えられる。そこからそれを横ばいに続ける人と、どうすればもっと良くなるかと考えてリーダーになっていく人と二つに分かれていく。外(会社)から与えられた動機で働くより、自分でやろうとする内から出てくる動機の方が長続きする」という思いから活気があり、風通しの良い職場づくりを心掛けている。
社員旅行や餅つき大会、社員の子どもたちと遊びながら触れ合う「令和の武者修行」のほか、能登の震災では社員らと5回ほど泊まり込みで炊き出しに行くなど、人と人とのつながりを大事にする。大学生が卒業と同時にアルバイトを辞めるときは社員らで店の卒業式を行うのも、旅立ちを祝ってそこから縁(つながり)をさらに深めていくため。「優秀な人材を集めるのではなく、集まった人でどこまで会社をつくっていけるかを大事にしている」と職場の固いつながりで味を守っているのも賀正軒の特徴の一つになっている。
学生から「社長にとって社員とはどういう存在ですか」と質問されると、福田さんは「一緒に会社をつくっていく同士。役割分担上、役職とかがあるだけで、あとはみんな一緒」と話し、自身も厨房に入って麺をゆでるときもあるという。コミュニケーションの取り方について質問されると「普通にしてたら仲良くなれる。仲間だから。そこに関して工夫はしていない。あまり意識しないでできるだけまっすぐにやろうとしている」と飾り気のないところが、社員同士が肩、肘を張らない雰囲気につながっている。男子学生からは質問ではなく「僕の家が賀正軒の姫路店から近いのでよく利用させていただいています。メチャクチャおいしい。スープの味が本当に好きです。いつもありがとうございます」と頭を下げられると、福田さんの笑みがはじけていた。

福田さんにお礼の言葉を述べる学生も現れた


