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社員なのに副業ができる ホテルオークラ神戸の現状と魅力
代表取締役社長で総支配人の石垣聡さん
経済学部の鍋嶋正幹准教授が教える「ホテル産業論」の7月14日の授業で、ホテルオークラ神戸の代表取締役社長で総支配人を務めている石垣聡さんをゲストスピーカーに招き、ホテルオークラの歴史や会社としての組織、ホテル業界の今後の役割などが語られた。


石垣さんは大学3年生の時からホテルオークラでアルバイトをし、客室清掃や宴会でのウエイターなどを務めた。就職活動は一切行わず、バブル景気の波に乗って1991年にホテルオークラの社員に。ベルボーイやレストランでの会計の仕事をこなし、95年にグアムに赴任して仕入れや経理を担当した。98年に帰国するとバブル経済が崩壊し、会社は大赤字に。そこで黒字化プロジェクトに参画。既存のホテルをオークラグループに引き入れるリブランド業務にも携わるなど、オークラの社内で頭角を現す存在へとのし上がっていった。
ホテルオークラ神戸は89年6月に開業。オークラグループではホテルオークラ東京以外で自前で作った唯一のホテル。95年の阪神淡路大震災で痛手を受けたものの、同年3月1日に営業を再開。35階建てのホテルのビルに各部屋の照明を巧みに利用して「ファイト」の文字を浮かび上がらせ、被災した神戸の街を勇気づけた。
2025年の入社人数は44人で内訳は大卒8、専門学校25、高卒11。従業員は約300人。すべて社員で運営し男女比は6対4。従業員用のランドリーや食堂、仮眠もできる女性用休憩室や寮も完備されている。週休3日制で副業を認める制度があるという。新入社員などがホテルオークラ神戸を選んだ理由を石垣さんは「神戸が好きだから」「和の雰囲気や説明会の印象が良かった」を挙げた。
24年に日本を訪れた外国人観光客は3500万人を突破して過去最高を記録。関西では大阪市、京都市に集中しているが、神戸市も伸びしろは大きい。大阪湾を挟んで「EXPO2025 大阪・関西万博」も開催中。今年3月から神戸空港が国際チャーター便の運航を開始。第2ターミナルの運用も始まっている。30年には国際定期便の運航も予定されている。同年には国内初のカジノを含む統合型リゾート(IR)が大阪市内に開業予定でさらに多くの外国人が近畿地方を訪れることが予想されている。
石垣さんはホテル業界の今後の特徴を三つにまとめた。一つはインバウンドを通じて外貨を稼ぐ輸出産業。宿泊、飲食費は宿泊数が増えることで外貨が増え、輸出産業としてさらに成長が期待できる。二つ目は40年近く働くことで技術革新や構造改革が必ず起こり、さらに発展できること。三つめはそれでもホテル業界には波があり、危うきと良きは表裏一体でもあること。AIなど技術革新によりフロント業務などは今後半数の人員で賄う傾向にあることなどを挙げ、ホテル業界での就職を希望する学生に現状を説明した。
その中で今後もホテルオークラは東京が開業60年、神戸が36年の実績をもとに「お客さまと働く人の信頼関係によって利用者を増やしていき、従業員の育て方を充実させ、そこに他のホテルとの差をつけていきたい」という独自のホスピタリティーを強調した。

と長田さん
同学部経済経営学科4年の長田颯太さん(22)=静岡県湖西市出身=は「ホテル業界に関わっていきたいと思い、この授業を受けています。(石垣さんは)アルバイトから始まって社長になったところがすごいと思いました。自分もお客様に触れたり、言葉をもらったりと、自分の接客でお客様の宿泊に携われるという仕事に魅力を感じます。海外では同時にいろいろな仕事に携われることが多いが、日本ではなかなか浸透していない。副業の制度を積極的に取り入れているところに関心を持ちました」とホテルオークラ神戸の制度に着目した。
同学部国際文化ビジネス・観光学科2年の留学生ラワット・キリティマさん(25)=ネパール=も「社員として働きながら、それ以外の仕事ができるというところに魅力を感じました。なかなかそういう会社はないと思うし、私のような外国人にはできないと思うから。ホテル業界での仕事を希望していますが、いろいろな仕事を経験したいという気持ちがあります」と来日2年目ながら流ちょうな日本語で自身が感じたホテルオークラ神戸の魅力を説明した。
