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接客業はスペックよりストーリー顧客満足度を高める観察力は不可欠

ゲストスピーカーに志摩スペイン村の岡田博文さん


 三重県志摩市にあるテーマパーク「志摩スペイン村」で人事などを担当している総務部長の岡田博文さんをゲストスピーカーに招いた授業が6月18日、本学内で行われた。地方テーマパークならではのホスピタリティや接客業の本質などを話していただき、レジャー産業への就職を希望している学生たちのキャリア形成へのヒントや業界への理解度を高めて将来の就職活動に役立てようとするのが狙いだ。

 出席者は経済学部の鍋嶋正幹准教授の「ホスピタリティビジネス論」を受講している学生たち。岡田さんは1995年に近畿日本鉄道に入社して鉄道マンとして働いた後、レジャー施設や旅館経営、物販事業などを展開する近鉄グループホールディングス内の会社に出向を繰り返し、レジャー産業の様々な業種を経験。その豊かな経験から積んだ知識と人を見る肥えた目から現在は志摩スペイン村の入社試験での面接も担当している。

 岡田さんは志摩スペイン村の概要を話した後、1987年に制定された総合保養地域整備法(通称・リゾート法)により、国民の余暇活動を促進して地域振興に貢献するため80年代後半は地方にテーマパークの建設ラッシュが続いたことに触れた。その後は人口減少など社会構造の変化やスマートフォンの普及など技術革新により遊園地に行く絶対数が減少。2003年に甲子園阪神パーク(兵庫県西宮市)、06年に神戸ポートアイランド(神戸市)が閉鎖されるなどホスピタリティ産業に大きな影響がのしかかっていることを説明した。

 そのうえで、生き残りをかけるホスピタリティ産業の魅力として「接客業はスペック(機能・仕様)よりストーリー(物語)」を挙げる。「接客を通して提供するのは商品やサービスそのものではなく、商品、サービスを通して感じる価値なのだ」と説いている。顧客接点における経験価値の最大化のために「喜びやストーリー性を追求する。新商品など機能的価値はすぐに真似されて持続しないが、人にしかできない情緒的価値は共感でき、心に残り、他に追随できないものとなるからだ」と強調した。

 そして、ホスピタリティ産業で働く人は「顧客満足度」を高めるための観察力が大きな武器になることを挙げた。顧客が遊園地などに来る前にどんな楽しみがあるかを期待する「期待水準」を、来て実際に体験した後に感じる「知覚水準」が上回れば、その差が満足度の大きさになる。岡田さんは「期待水準は十人十色といわれ、それぞれで違う。そのため顧客に真摯に接して何を求めているのかを観察し、望んでいることを察知しなければ満足度を高めることはできない」と説明した。

 志摩スペイン村では近年、SNSを活用してインスタ映えスポットをつくったり、ポケモンなど外部コンテンツとのコラボイベントを導入して入場者数が4倍に増えたことなどを伝えた。時代の流れに取り残されることなく、その時,その時に合わせた「心に残るサービス」を提供していくことの大切さをいまも求めている。

 学生から「閉園することなく経営危機を乗り越えた原因は」と質問にされると、岡田さんは「従業員が一生懸命にお客さんに接していたことが大きい」とこたえ、「基本的に接客が好きで入ってきた人ばかり。明るくて元気なら問題はない。我々はそういう人を採用してきました」と話し、レジャー産業で働く希望を持つ学生たちの背中を押した。

 採用について特に重視していることを聞かれると、「面接する人によって考え方は違うが、私はこの会社が第一志望ですというより、この会社ともう一つの会社のどちらにするか迷っていますと正直に言う人を採用してきました」と話し、裏表がなく、自分がアピールしたいことをしっかり伝える大切さも強調した。

 登壇した岡田さんの目の前の席で受講した経済学部国際文化ビジネス・観光学科3年の南部穂乃花さん(20)=神戸市出身=は「接客業に興味があり、お客さま目線で考える温かい空間で働きたいと思っているので勉強になりました。お客さまの満足度を高めるための観察力の必要性には共感しました。(就活する)意欲をかき立てられました」と目を輝かせた。南部さんと並んで熱心に受講した同学科3年でフィリピン出身のナカムラ・メアリ・カオレイ・レキーリオさん(21)は「私は日本の面接の文化を分かっていませんが、外国人の私からしたら正直な人を採用する会社があることを知り、働きやすいなと感じました。就活に役に立つと思います」と声を弾ませていた。