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激増するインバウンドにともなう オーバーツーリズム問題を考える
神戸国際大付高3年生が大学教授の出前授業で
新型コロナウイルスの感染禍が落ち着き、近年はインバウンド(訪日外国人観光客)の増加が止まらない。それに伴う「オーバーツーリズム」が国内各地で問題になっている。どんな問題が起きているのか。その具体的な事例を調べて問題に触れ、将来における対策などを高校生が大学教授とともに考える授業が6月9日、神戸市垂水区の神戸国際大付属高校で行われた。
同校で「出前授業」を行ったのは神戸国際大経済学部で国際文化ビジネス・観光学や観光政策などを教える遠藤竜馬教授。高校生は同校の国際大クラス3年生で同大に進学してさらに国際文化などを学ぶ希望を持つ男子生徒たちだ。

授業は神奈川県の江の島を訪れる多くのアジア人観光客を映し出しているニュース動画を見ることから始まった。日本の人気漫画が世界に広まったことで江の島の人気もうなぎのぼり。遠藤教授は「ここはスラムダンクの聖地です」とインバウンドであふれる原因を説明した。鎌倉市と藤沢市を結ぶ江ノ島電鉄(通称・江ノ電)の車内は観光客で溢れ、地元住民の通勤や通学、日常生活で足となっている江ノ電を普段のように利用できない問題が生まれている。生徒たちは全国で起こっている問題を考え、古都・京都市内で起きている舞妓さんにつきまとう「舞妓パパラッチ」や、奈良市で天然記念物の鹿がいじめられていることなどを挙げた。
国は2003年に「観光立国」を掲げて訪日促進策に力を入れ始めたことが今日のインバウンド増加につながっている。2024年には外国人観光客は3500万人超となり、その8割がアジア諸国からの訪れる人々だ。急速な経済成長により海外旅行ができる富裕層や中間層がアジア諸国に増えたためだ。
国は将来的に年間6000万人を超える外国人観光客を受け入れる考えがあると言われている。現在の問題解決がないまま大幅な受け入れ目標数は可能なのか。遠藤教授は2023年1~7月の都道府県別外国人延べ宿泊者数を例に挙げ、東京、大阪、京都、北海道、福岡、沖縄、千葉の7都道府県に訪日客の8割が集中し、残り40県で2割を分け合っている状態であることを説明した。国際航空便の発着空港(成田、羽田、関空等)や新幹線など国内の交通網が東京を中心とした大都市圏に集中していることが原因であり、未整備な日本海側などを開発していけば、国の目標達成が十分に可能なことを説明すると生徒らは驚きながらうなずいていた。
遠藤教授は日本海側の最も国際競争力の高い資源に「豪雪」を挙げる。北海道や長野県内のスノーリゾートには良質な日本のパウダースノーを求めて大勢の外国人が押し寄せて長期滞在する動向が続いている。観光立国としての政策がさらに発展していくにはインバウンドの分散化が不可欠で、都市型の観光から山岳地帯や国立公園を活用した自然観光へと転換することが求められている。遠藤教授は「国内各地に眠っている『宝』を発掘し、世界へと発信することが今後の観光立国につながっていく」と話し、生徒らと今後の日本を見つめた。