武内 孝祐 先生【専門分野:スポーツ医科学】

理学療法士として、本学の教員をしつつスポーツトレーナーとしても活動されている武内先生に、インタビューしました。学生時代のお話を通して、夢を実現するために必要なことをお伺いしました。

どんな学生生活を過ごしていましたか

小学校からサッカーをしていました。高校生の時にスポーツに関わる仕事がしたいと思い、理学療法士の道へと進みました。大学では、理学療法について学びつつ、サッカー部に所属していました。また、異文化に触れることも好きで、海外旅行もしましたね。友人たちとイタリアに行ったことはとても印象が残っています。

大学院にはなぜ進学されたのですか

大学2年生の時に、スポーツについてもっと学びたいと考え大学院に進学することを決めました。スポーツに関する様々な専門分野や、アスレチックトレーナー資格の取得について、その頃から進学先を調べました。また資料や論文を読むだけでなく、実際に他の大学の先生にアポイントをいただいて訪問もしました。
その中で、ある先生にメールやり取りについて叱責されたことがあります。自分としては丁寧に書いたつもりのメールでしたが、先生からは「言葉の使い方が間違っており、失礼になってしまうよ。」と指摘されました。それ以降、文章には人一倍気を付けるようになりました。
今思えば、その先生はあえて言って下さったのだろうなと感じています。その時に失敗して指摘されていなければ、社会人となった今でもメールで相手を不快な思いにさせていたかもしれません。社会に出たら、1つの失敗が取り返しのつかないことになりかねないこともあります。
学生時代に調べたことや聞いた話だけでなく、積極的に社会と関わっていく中で得たものは私にとって財産になっています。

大学院で研究をしつつスポーツトレーナーをされていたとのことですが、どのような生活を送っていましたか

筑波大学の大学院に進学し、研究しながらラグビー部のトレーナーをする毎日を過ごしました。朝からトレーナーとしてグラウンドに向かい、それが終われば、病院で勤務、そして大学院に戻って研究するという生活を繰り返していました。2年間、睡眠時間2~3時間という生活をしていました。毎日のことで身体は疲れますが、とても充実していました。
ラグビーのスポーツトレーナーは試合中にもフィールドに出ます。よほどではない限り試合は止まることはありません。手当をしている最中に隣でぶつかり合いが行われます。とてもタフでスピード感のあるスポーツだと思います。そういった中で一瞬一瞬判断を求められますので、トレーナーとしてもとても鍛えられました。

スポーツトレーナーをしていて難しかったことはありますか

けがの予防ですね。どんなに鍛えた体であっても、運動中に起きるものから、疲労が原因でケガが起こることもあります。その中でも防げるケガがあるのですが、例えば慢性的なケガや筋肉のトラブルなどは、練習量を調整したり、復帰するタイミングを変えたり、コンタクト(アタック)等を減らすなどすれば予防できるはずです。
ですが、これがとても難しい。すべての選手が万全のコンディションとは言えない中、試合に勝つために厳しい練習をし、タフな試合を戦います。疲労やケガなどは、日々隣り合わせです。最終的に試合出場は練習に参加するかどうかは監督やコーチが決定しますが、そのために私たちトレーナーは、選手と監督、コーチ、ドクターとの間に入ってそれぞれに情報提供をしていかないといけないわけです。
選手にもここはコーチに言わないでほしいということもありますし、監督にも選手に言わないでほしいということもあります。私たちが求められるのは情報のバランス感覚と空気を読むことです。その中で、ケガを0にすることはできませんでしたが、できるだけ予防させるように取り組みました。

2012年全国ラグビーフットボール選手権の様子。コートで選手のそばにいる(写真右手)が武内先生。

なぜ研究の道へ進まれたのですか

スポーツに関わる研究活動をしたいと考えこの道に来ました。取り組んでいる研究は、スポーツ障害調査や予防など。現場で疑問に感じたことを研究し、また現場で活かすことができればと考えています。研究と授業、大学の活動をしながら、今でも国体のトレーナーなど、スポーツ選手のサポートを続けています。毎日忙しいですが、研究と現場の両立はとても充実しています。

ゼミではどんなことをされていますか

理学療法士としての知識や素養を身につけるだけでなく、社会に出て役に立つように、学生の間に自分の考えや伝える力を養いたいと思っています。その一環として、1分間スピーチを取り入れています。例えば、「2028年のオリンピックにどんなスポーツを入れたいか」など、お題を毎回変えて話してもらいます。このスピーチでは論理的に話す技術を身につけることを目標にしています。理学療法士やスポーツトレーナーとしてだけでなく、社会人として自分の思いを自分の言葉で伝えることは、非常に大切だと考えています。

学生のみなさんに伝えたいことはありますか

学生の皆さんには、コミュニケーション力、チームワーク力、管理能力を学生のうちに身に着けてほしいなと感じています。
特に、僕たちの仕事は、ドクターや患者様など様々な方の間に立って仕事をすることが多く、また、たくさんの方と一緒に仕事をしなければいけません。相手の意向を読み取ることができ、それを周りに伝えること、また一緒に協同することが大事だと感じています。学生のうちは失敗をしてほしいと思います。社会に出ると、その失敗が取り返しのつかないことになる場合が多いです。失敗できるうちに失敗してほしい。それには、学生のうちに地域コミュニティで活動をしたり、スポーツチームの見学をしたり、教員以外の大人に接することも大事だと感じます。
また、管理能力はとても大事だと思います。それは時間の使い方、お金の使い方ですね。仕事が始まると本当に忙しくて、「ライフワーク」と「ライスワーク」のバランスが取れなくなってしまい、精神的にもきつい思いをする方も多いです。学生時代と違う、社会とのギャップが大きいかと思います。仕事をするときと、仕事のために勉強するとき、そして息抜きをするときを、うまくバランスをとる必要があります。学生生活においても、国家試験の勉強は非常に大変ですが、時間管理の練習だと思って、勉強・アルバイト・部活などの時間をうまく使ってもらえるといいなと感じています。
僕自身も朝型人間で、7時台には一日の仕事を始めています。大学の授業や研究が終われば、スポーツチームのサポートをしに現場にも赴いています。管理能力はぜひ身に着けてほしいと思いますね。そして、ぜひ自分のやりたいことを実現できる4年間を過ごしてほしいと思います。

卒業生に対してメッセージをお願いします

僕は、学生時代の友達とは今でも連絡を取り合っています。医療ならではですが、例えば、「こんな症例は対応したことがあるか」など、問い合わせが来たりしますね。学生時代は夜遅くまで勉強や研究をしていました。そういった日々を送る中で、「一人じゃなかったこと」はとても大きかったと思います。仲間がいたからこそ頑張れましたし、今があると思っています。みなさんも各々の進路で悩みもたくさんあると思います。大学や学生時代の友達を存分に頼ってほしいと思います。

(記事内容は取材当時のものです。)

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