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学術研究会主催 松田謙一先生講演会 高い満足度・関心度をいただいたお話をレポートいたします!

口から食べることの大切さ ~義歯治療が全身に及ぼす健康効果~

2024年10月5日(土)神戸国際大学学術研究会第一回講演会を開催いたしました。ご参加くださった方全員が、アンケートにご協力くださり、高い満足度・関心度をいただきました。アンケートの中で『感想』を自由形式でお書きいただいたのですが、皆様びっしりと書いて下さっておりました。ありがとうございました。お書きいただいた『感想』を基に、松田先生の講演会のレポートをいたします!
テーマは、『口から食べることの大切さ ~義歯治療が全身に及ぼす健康効果~』です。
どんなお話だったのでしょうか。まずは、松田謙一先生のご紹介です。

●2007年3月 大阪大学大学院歯学研究科 修了 学位取得(歯学博士)
●2009年1月 大阪大学大学院私学研究科 顎口腔機能再建学講座 助教
●2019年9月 医療法人社団ハイライフ 大阪梅田歯科医院 院長就任
●2020年4月 大阪大学大学院私学研究科 顎口腔機能再建学講座 臨床准教授就任

松田先生は、大阪大学歯学部・同大学院卒業後、顎口腔機能再建学講座にて助教 を務められ、研究・学生教育・臨床に携わってこられました。現在は、医療法人社団ハイライフ 大阪梅田歯科医院院長として患者様の治療にあたるとともに、「機能する義歯の実践的な治療」について、歯科医師教育のセミナーを精力的に実施されています。また、教科書等の執筆も多数されています。

                               

~ 咬合力と全身健康 ~

自分の歯はたくさん残っているが、ほとんどの歯が虫歯や歯周病で治療が必要な状況と、自分の歯はもうないけれども、治療するところがない清潔な口の中。どちらが健康だと思いますか?スクリーンの左右にそれぞれの写真が映し出されました。松田先生の講演が始まりました。


『歯』と一般的に言いますが、『歯』は、『歯』と『歯ぐき』と『歯を支える骨』で構成されています。大切なのは『咬合力』、咬む力なのです。長年携わった研究プロジェクトから得られた様々な研究成果によりますと、咬む力が大きい人は、野菜やタンパク質の摂取量が多く、穀物接種量が少ないことがわかっています。咬む力と栄養摂取は大きく関係するということです。また、歩行速度にも関係があることがわかっています。咬む力、咬み合わせがきちんとある人は、歩行速度が低下しにくいのです。歩行速度が保たれると認知機能も保たれる。咬合力の保持は全身健康の保持に大きく関わるのです。

☞心の声
まず、咬合力の大切さのお話がありました。なるほど!よくわかりました。
さて、先ほどの歯の写真。。。どちらが健康と言われても、病気の治療がたくさん必要なのも困るけれど、歯が一本もないと『自分の口でものを食べること』ができなくなりますよね。松田先生、どうすればいいのですか?

~ ブリッジ・義歯・インプラント・何もしない ~

治療方法には、皆さんがよくご存知のように、両隣に自分の歯がある場合にはブリッジという治療方法があります。ただし、ブリッジは両隣の健康な歯を削る必要があります。次に保険内義歯または保険外義歯。これには総入れ歯、部分入れ歯と患者さんの歯の状況により多岐にわたる治療があります。それからインプラント。よく歯医者さんで薦められるのではないでしょうか。歯を支える骨に直接埋め込む方法です。強い咬む力を得られる治療方法ですね。ただインプラントは保険外で高額となります。治療の方法はその患者さんの状況、咬み合わせ、違和感等により『合う、合わない』があります。何がいいとは一概には言えません。実はその他にもうひとつ、『何もしない』という選択肢があります。日本ではなかなか提案されることはないですが、ヨーロッパではある程度、浸透している考え方です。第二小臼歯までそろっていれば咬むことにほぼ支障はないのではないかという考えです。データもあります。奥歯を失くした患者さんは、当然、それ以前より満足度は下がります。治療をした患者さんは、その時は満足度があがりますが、時間が経つとまた下がってしまうんです。治療をしない患者さんの満足度には、変化がないんです。もちろん、歯科医にかからず自己判断で『何もしない』という選択することはお薦めできません。上下どちらかの歯が抜けてどちらかの歯が残っている場合は、残っている歯が伸びてきます。そうなると部分入れ歯等をつくっておき、マウスピースのように食べるとき以外に装着する等の必要があります。患者さんの状況にあった様々な選択肢があることを知っていただけたらと思います。

☞心の声
治療しないという選択肢。初めて聞きました。では私たちは歯科医の先生に相談し、どうすればいいのかをお任せすればいいのでしょうか。

~ 最終的にはご自身の感覚 侵襲性の少ない方法から選択がお薦め ~

大切なことは、患者さんの咬み合わせの具合、違和感の強弱です。主観的なものですので、歯科医にはわかりません。やはり最終的には患者さんが選択すべきだと思います。

☞心の声
自分で決めるんですね。自信がないし、不安ですね。松田先生、何かアドバイスはないでしょうか。

アドバイスとしては、侵襲性の少ない方法から選択していくことですね。侵襲性が少ないとは、周囲の組織に対する影響やダメージが少ないということです。やってみてどうしてもだめなら他の選択肢を試すことができますね。やり直しが効く治療を選択することが良いのではないかと思います。

~ 義歯のお話 ~

ここで少し義歯のお話をします。義歯には総入れ歯と部分入れ歯があります。自分の歯という支えるものが残っている場合と全く残っていない場合とでは大きな違いがあります。歯の残り方により部分入れ歯より総入れ歯のほうが安定性が高いこともあります。特に部分入れ歯は本数、残っている歯の位置などで様々なバリエーションがあり技術的にとても難しいです。
義歯床と呼ばれる部分は咬んだ力の受け止めの部分です。義歯のピンクの部分で保険適用ではアクリルレジンが使われます。保険内と保険外は基本的に材料の違いとなります。昔は、人工歯は陶器で作っていました。ウェッジウッド製もあったようです。ですが陶器は割れたり音がしたりしますので、今は保険適用では硬質レジンが使われます。そのほか咬む力を他の歯に伝えるためクラスプという金属や、義歯が沈みこまず義歯と残っている歯を一体化させ動かないようにするレストという金属があります。

☞心の声
義歯の制作過程を動画で見せていただきました。
丁寧で複雑で、時間をかける高度技術だと驚きました。

~ 義歯にはリハビリが必要 ~

義歯はまず作成するのに少なくとも5回の通院が必要です。たくさんの工程があり、調整も大変です。ごく本数が少ないとか暫間的なものでない場合は、型取りをして、次の通院で出来上がりという歯科医院はお薦めできません。また義歯は自分に合ったものができあがったとしても患者さんご自身のリハビリが必要です。例えば義手や義肢。患者さん自身にカスタマイズし、調整を重ねた上で出来あがったものを装着しますが、それを使って細かい作業をしたり、走ったりするには訓練が必要です。ですが、みなさん義歯については装着すればすぐに元の自分の歯のように咀嚼できると思われています。そうではないのです。自分の義歯を装着し練習をし、咬み合わせに慣れていく必要があります。

☞心の声
本当ですね。義歯についてはなぜだかそう思っていました。

~ 義歯の満足度 ~

義歯とくに部分入れ歯は高度な技術が必要です。満足度でこんな数字があります。
自分の歯が全部揃っている人の満足度 80%
部分入れ歯の人の満足度 40%
総入れ歯の人の満足度 50%  
満足度ですが、どんな要素があるかというと、
●痛くない ●味がわかる ●保険適用である ●話がしやすい(声、発音) ●外れにくい 等です。 少なくとも5回以上かけて丁寧に・技術をもって義歯を作ると隙間もできず痛くありません。味は舌で感じるので義歯は関係ないはずですが、違和感があると、味を感じにくくさせます。この改善には、リハビリが必要ですね。話がしやすいのは上下の隙間がないこと。これも技術でカバーできます。外れにくさは調整をしっかりすれば可能です。保険内治療での義歯治療は限界もあります。残念ながら、いい材料と治療に使える時間がたくさん使えることから保険外治療をお薦めすることもあります。ですが、一本のインプラント分で質のいい保険外義歯治療を受けることもできます。

~ 講演会場の一体感 ~

松田先生から、咬む力と全身健康の関係や、様々な補綴治療(歯が欠けたり失ったりした場合に人工的に歯を補うために行う治療)や治療をしないという選択肢もあるということを、ご自身の研究成果に基づいた客観的なデータや、映像も織り交ぜて、とても分かりやすく興味深くお話いただきました。松田先生と会場との一体感が熱く伝わる講演会でした。

神戸国際大学学術研究会では 2024年度 第二回講演会を2024年12月14日(土)に行います。次回は大学を飛び出し、三宮で開催いたします。

講演:アレックス・カー氏
トークセッション:アレックス・カー氏&毛教授
   第一部:講演 『観光は立国になるか ~インバウンド観光の対応方法~』
   第二部:トークセッション
日時:2024年12月14日 午後2時半~午後4時半
場所:ANCHOR KOBE アンカー神戸
ぜひご参加ください。

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