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大阪IRについてIR推進室の方にご講演いただきました

神戸国際大学経済学部の北邦弘先生が担当する観光経済学において、大阪府・大阪市IR推進局推進課 職員井上 裕貴氏にご講演いただきました。大阪に誘致予定のIR施設について、大阪府・市の取り組み、IRの意義や効果、現状の問題点などについて解説していただきました。

まずは井上氏が所属するIR推進室や計画の大枠や経緯、予定地についての概要を説明。

IR (Integrated Resortの略)とは総合型リゾートともいわれ、ホテル、エンターテイメント施設、レストラン、ショッピングモール、国際会議場、展示場などが集まった大規模複合型の施設のことで、世界のIR、なかでもシンガポールの2つの事例を挙げ、美術館、スケート場、博物館、水族館やプールなど特徴のある施設を、訪日観光客の来訪数による経済効果や雇用効果など具体的な紹介をされました。

次に公共政策としての「日本型IR」は、日本の観光産業の成長を促進させ「観光先進国」化を目的としている。今まで日本には大規模な国際会議場、展示場、宿泊施設が少ないため一度に大人数の外国人や富裕層の外国人を取り込むことができなかったが、「日本型IR」は様々な施設を展開し観光業の成長、地域経済の促進、長期滞在型観光宿泊施設を整備することで国際競争力を高めようとしているとのこと。

日本と大阪の現状を報告。
人口の減少と高齢化社会により需要力不足、労働力不足による経済の縮小が起こっている。大阪は製造業、卸売業、小売業等における事業所数・従業者数の減少が進んでいるが、大阪を含めた関西圏は京都、神戸など有名な観光地がたくさんあり、ビザの発給要件やLCCなど格安航空機の規制緩和を行い便数が増えたことによりコロナ前までは訪日外国人が劇的に増えていたので、それらの資源を生かし基幹産業として観光業を主軸にしていくと紹介。

観光の基幹産業化の3つの視点として、滞在型観光の推進、世界水準のMICEの整備、宿泊施設の充実が不可欠であり、宿泊施設の充実については、世界の富裕層を取り込むためのラグジュアリーホテルの充実をさせるためにIRが必要であるといわれて言います。

訪日外国人が旅行で消費するものは交通費や食費、滞在費など基本的な事項が多く、アクティビティや体験型施設、イベントの参加などにはあまり消費されていない。この部分を伸ばすためには滞在型観光の推進が不可欠であり、解決策として今まで日本になかった世界的なエンターテインメントや思い出に残るアクティビティを催して消費単価をあげていくことが必要。

次に注目されているMICEは、国際会議や展示会、イベント等の頭文字をとった造語で、ビジネストラベルのひとつの形態です。参加者が多く、旅行消費額も多いことから誘致に力を入れる国や地域が多くあります。

宿泊施設の充実については、大阪は訪日外国人観光客の数は多いがラグジュアリーホテルが同じ観光地であるロンドンや東京に比べて少ない。ラグジュアリーホテルを増やすことで富裕層が訪日し、消費額の単価を引き上げることが期待されている。

大阪のIRは、夢洲に宿泊施設、MICE施設、エンターテイメント、ショッピング施設などを建設するが、面積としてはカジノの施設は全体の3%しかなくスペースはとても狭い。

IR事業者は、カジノやエンターテイメントの運営を行っているアメリカのMGM、日本のオリックスを中心に電鉄会社など大阪の地場の企業が参加し、それぞれの企業の特性を活かせるようになっており、初期投資として1兆8000億円、建設関連費で7800億円、それ以外の費用で3000億円となり民間企業が投資する額としては大変大きい。

年間の売り上げが5200億円、うちカジノの売り上げが80%の4200億円、それ以外で1000億円を見込んでおり、2029年秋から冬にかけて開業予定。

しかし現状カジノの税制や夢洲の土壌汚染の問題など今後の法整備が必要となっている解決していない問題、課題が累積している。

大阪IRには施設が8つあり、総延べ床面積は約80万平方メートル、体験型の魅力増進施設、バスやフェリーなどの送客施設も建設予定。

大阪・関西・西日本をはじめ日本各地と連携し観光客を送り出し、旅行博などのイベントのショーケース機能、チケットや宿泊施設の予約ができるコンシェルジュ機能、交通機能を充実させることにより立地を活かし、世界と日本各地をつなぐハブとして、各地の様々な観光情報の提供や来訪者の要望に叶った旅行の手配などを行う機能を総合的に構築する日本観光のゲートウェイの形成に一番期待している。

大阪にIRを作ることで、年間2000万人の来場者、設備投資1兆8000億円、経済波及効果1兆6000億円、雇用促進効果11.6万人などの効果が見込まれているため観光の振興、地域経済の振興、雇用の拡大につながり、またかなりの訪日外国人、国内旅行者が訪れるため治安維持に必要な警察署、警察官の増員、世界トップレベルのギャンブル依存症対策なども収益から捻出でき、納付金1060億円が見込め大阪府民、市民のための政策に役立てることができると予想していると説明。

最後に参加した学生の「すでにアジアには中国、韓国、シンガポールにIR施設があるのに今から日本に作っても大丈夫なのか」「訪日外国人の多くは中国人だと思いますが、中国国内にはすでに複数個所の施設があるので日本に来てカジノに行くのかが疑問です」という質問対して、「日本は観光地がたくさんあり、日本独自のIR施設を目指しているので訪日外国人は、アジア以外からも来てくれる。またIR施設の来場者は国内からもかなりの数を見込んでいるのでカバーできると考えている。」と答えていました。

【講義に参加した4名の学生のコメント】

①IR施設が建設されることによって大阪府市だけでなく周辺都市にまで経済効果があるのはすばらしいと感じました。
コロナ後に行きたい国で日本が注目されていることに驚きました。

②カジノがあるので悪い点にばかり目がいきがちですが、IRは私自身できあがることを楽しみにしていますし、ほかに同じように思っている人もいると思います。良い施設になることを楽しみにしています。

③日本にIRができる話の話の中で、カジノというワードに少し抵抗があったが、それ以上に訪日外国人に向けた観光事業が増えるということで経済面などが潤うかなと思えた。IRに対して前向きに考えられると思う。

④本日の講義を聞いて感じたことは、地域振興や文化・芸術の振興などIRを行うことによって大阪の振興になりますが、その一方で観光客のトラブルや青少年の犯罪が増加することが心配になりました。