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入学される皆様へ向けた学長メッセージ(2020年度入学式 式辞にかえて)

 新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。新型コロナウイルス感染症による影響のため、栄えある入学の日に式典を挙行することができず、このような形で式辞を述べることは断腸の思いであります。しかし、皆様を本学にお迎えする気持ちには、いささかも変わるものではありません。

 大学は、大勢の新入生の皆様にとって学校教育の最終段階に当たり、その仕上げの4年間となるでしょう。この後は、大学を卒業され社会に出られます。もちろん、人間どの年齢でも学ぶということには終りはなく、学ぶという姿勢はどの年齢でも求められます。しかし、多くの方が学校という形式で教育を受けることは最後となるでしょう。その大学での学びは、これまでのように進学を目的としたものではありません。これまでの教育とは根本的に目的が異なります。

 それでは、大学では何を目的に学ぶのでしょうか。それは良き人間、良き市民になるためです。この定義は一般的ですが、各大学はそれぞれが良き人間になるための独自の特色ある教育を行っています。本学では、創設者の八代斌助師父の「神を畏れ、人を恐れず、人に仕えよ」という建学の精神に基づいた教育を行っています。この建学の精神は、高度な専門知識でもって人類に奉仕できる、貢献できる人材を育てるという意味と私は理解しています。本学は経済学部とリハビリテーション学部からなりますから、専門知識は経済学とリハビリテーション学です。これらの学問を修得するとは、どのような意味を持つのでしょうか?

 それは、社会で「生き抜く力」を与えてくれることにあります。冒頭で言いましたように、現在世界は未曾有の事態がこれまで以上に発生しています。新型コロナウイルスの感染者はいまや100万人を超え、死者は5万人を超えています。そして世界経済は、10年以上前のリーマンショックを超える不況が来ると予測されています。この感染症によるこれほどまでの影響を予見した人は誰もいません。阪神・淡路大震災や東日本大震災も同様です。1970年代に石油ショックにより世界的な大不況が生じた際、ハーバード大学で教鞭をとっていた経済学者のガリブレイスは、このような状況を「不確実性の時代」と名付けました。それから45年以上経過した現在、我々の身の周りには予期でないことがますます大きなスケールで、より頻繁に起こっています。

 このような、何が生じるか分らない不確実な社会で必要なものが、「生き抜く力」です。リスクを予測できなくても、不測の事態が発生した時、あるいは困難に直面した時に勇気を持って対処できる能力。そのような能力が「生き抜く力」です。それは、課題を見つけ、その解決法を考え出し、それを整理し提案し、実行できるという一連の能力からなっています。探求心、解決力、提案力、実行力といってもよいでしょう。

 このような能力は明確な定義もありませんし、それを高める公式もありません。それは学問や学習を通じて獲得するしかありません。その習得法は主体的、自主的な学習態度です。講義の中で、読書中に、あるいは日常生活の中で問題に気づき、その本質は何かを考え、解決方を見いだし、整理して他の人に伝える。あるいは、見出した解決法を、他の課題にも応用し、実行する。これらの一つ一つの積み重ねが、結果的に皆さんの「生き抜く力」へとつながっていきます。大学の講義やゼミナールでの学習は、知識を教えるのみではなく、皆さんの「生き抜く力」が身につくように手を差し伸べることにあります。学びの主体はあくまで皆さんです。今後4年間、主体的に考え、行動して下さい。そのためには、神戸国際大学はサポートを惜しみません。

 最後になりましたが、保護者の皆様に一言ご挨拶させていただきます。これまで愛しんで育ててこられたご子息・ご息女を、4年間お預かりすることとなりました。我々教職員一同は、このような重責を担うこととなり、光栄であると同時に身の引き締まる思いをいたしております。新入生の皆様が立派に成長されるように誠心誠意努力する所存でありますので、ご家庭におかれましても、ご支援のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

2020年4月3日
神戸国際大学 学長
辻󠄀 正次

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辻󠄀 正次 プロフィール
みんなのインタビュー:辻 正次 先生