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卒業される皆様へ向けた学長メッセージ(2019年度学位記授与式 式辞にかえて)

卒業生の皆さま、ご卒業おめでとうございます。

 本来は、式場に皆さんをお迎えし、2019年度神戸国際大学学位記授与式を挙行すべきところでしたが、新型コロナウイルスの世界的かつ国内での拡散という未曾有の状況下で、社会人として新たな歩みを始める卒業生の皆さんを健康な状態で送り出すことも本学の責務であり、苦渋の選択として本学創設以来初めてとなる式典および祝賀会の中止を決定いたしました。

しかしながら、授与した学位記は、皆さんの4年間の学びへの取り組みの証であることは、問うべくもありません。この意味で、大学教職員一同、皆さんの努力に敬意を表し、また長きにわたってご子息・ご令嬢を支えてこられたご家族ならびに保護者の皆様に心からの感謝とお祝いを申し上げます。本当におめでとうございます。

 海を臨んで建つこのユニークなキャンパスを「青春の舞台」であり、学びの場として選ばれた皆さんは、これまで充実した、また活力ある学生生活を送ってこられたことと思います。先生方の厳しいながらも、温かい薫陶を受けるとともに、ご家族や学友達の協力と励ましの下で、忘れ得ぬ青春のよき思い出を胸に刻んで、この地を巣立って行かれます。皆さんのその誇り高き姿をともに祝い、将来を託す場にいない現実に残される教職員も無念の気持ちでいっぱいです。

 毎年学位記授与式では、私の思いを卒業生に贈ってきました。「異文化を自分化に」、「破壊から構築と創造を生み出す人間の力の偉大さ」、「グローバル化した社会での新たな視野を通した創造という世界へ踏み出す力」、「人類の存在意義と他者への気遣い」などがそれにあたります。しかし、本年は私が青春時代から繰り返し自問自答してきた言葉を再度皆さんに贈りたいと思います。その問いとは、「自分らしく生きているか」というものです。この問いには国境はありません。人類すべてに課せられた問いでもあります。他者の声に耳を傾けることは大切ですが、この問いの答えは「己の声を聞く」ことでしか得られないのです。自分が何者であるかは己しか知り得ないのですから。その上で、個である我々が人生の節々で己を見つめ直す問いこそが「自分らしく生きているか」という問い掛けにあると思います。今年は大学生活の最後の課題としてこの問いを皆さんに贈りたいと思います。

 さて、遠く祖国を離れ、異なる言語、文化、習慣の壁を克服し、本学での学業を成し遂げた留学生の皆さんの努力は並大抵のことではなかったと思います。深く敬意を表します。本学を卒業したことを誇りとして、本学在学中に身につけた知識や技術を社会の発展のために役立て、母国と日本との友好の架け橋となられることを期待しています。

 この機会に、皆さんを見守り育んで下さった多くの人々、とりわけご家族・保護者の皆様の温かい励ましに思いを馳せて頂きたい。ご家族・保護者の皆様におかれましては、この日を心待ちにして来られたことと存じます。皆様のご支援に心から感謝するとともに、お慶びを申し上げます。

 結びになりますが、私自身も本年度で長年奉職した神戸国際大学を卒業いたします。次回皆様にお会いするのは、秋の同窓会ホームカミングかと心待ちにしておりますが、本学には留学生の同窓会もあり、今から楽しみにしております。私が常々申し上げているように同窓生とは「生涯の絆」で結ばれているものであり、国籍を超えて存在するものです。神戸国際大学はその起点としていつでも皆さんの来訪を歓迎します。

 新たな道へと希望に満ちて足を踏み出される皆さんが、心身ともに健やかで実りある人生を歩まれ、未来社会を担う若き力として活躍されますことを心から祈念して、ご卒業への祝意のメッセージとさせて頂きます。

2020年3月19日
神戸国際大学 学長
下村 雄紀